パッシブデザインコンペ

パッシブデザインコンペ 2016入賞作品紹介

パッシブデザインコンペ2015ロゴ

パッシブデザインとは、建物の周りにある自然エネルギーを最大限に活用・調節し、質の高い室内環境を実現させながら、省エネルギーに寄与しようとすること。
今回で4回目となるパッシブデザインコンペは、パッシブデザインに対する設計者の取組みを評価し、世の中に広く、パッシブデザインの魅力を伝えるために企画しているものです。

募集概要

パッシブデザインに配慮した住宅(個人住宅・集合住宅)・建築物・街並み計画などの実物件、計画案(新築・リフォーム共に可)。 また、パッシブデザインを導入する上で採用する技術(製品・計画手法など)も対象とします。

パッシブデザインの観点からの事前評価(温熱及び省エネ性能)、事後検証(温湿度及びエネルギー消費量実測)を実施しているものは、評価加点対象となります。

<応募作品受付期間>
2016年5月30日(月)〜2016年10月12日(水)

<審査員>
■審査員長
横内 敏人(横内敏人建築設計事務所 代表/京都造形芸術大学環境デザイン学科 教授)

■審査員
秋元 孝之(芝浦工業大学工学部建築工学科 教授)
西方 里見(西方設計 代表)

審査員長からの総評
今回の審査で、大賞が工務店の自社設計によるモデルハウスとなったことについては、審査員長として自らの責任でそう判断したにもかかわらず、正直複雑な思いである。
全国各地の地域で活動する工務店の熱心な取り組みについては、かねてより認識をしていたが、これほどまでの高いレベルに達していることをまざまざと見せつけられる結果となり、一建築家としてもうかうかしていられない、というのが正直な感想である。
作品数は33点で、個人の設計者と、工務店やハウスビルダーとの比率はほぼ半々というところだった。どの作品も温熱設計に真摯に取り組み、デザイン的にも優れたものが多く、全体的にはレベルの高い内容だと感じた。また、今回は事後検証や温熱性能の数値化にも多くの参加者が取り組んでおり、参加者の意識の高さをうかがうことができた。その中で「大賞」となった「はりまの杜・しそう杉の家」は、単に住宅設計の内容が優れているだけでなく、地域の林業との連繋や、木材の品質管理と製材を自社で行うことにより、質の高い地域環境循環型の生産システムを有し、外構の緑化計画にいたるまで一貫した取り組みがなされているところが群を抜いており、また、デザインやプランニングも優れていて、内容と密度の高さは文句のつけようがないものだった。一方で設計事務所の提案は、建築・設計上の取り組みに限定されている感があり、「大賞」の視野の広さと比べると、目劣りがすると言わざるを得なかった。
審査員の中で最後に議論となったのは、建主の要望や予算などの制限の中で建てざるを得なかった一般の住宅と、それらの制限がないモデルハウスを同列の評価とするべきかいうことだったが、もしそうでないのなら参加条件に記すべきであったはずで、今後のパッシブデザインのまさに「モデル」としての役割も考慮した上で、あえて内容のみを審査基準にすることとした。
(審査員長:横内敏人)
審査員からの総評
これまで数年に渡ってパッシブデザインコンペの審査委員を務めてきたが、今回は特にすべての応募作品の表現が格段によくなった印象がある。このコンペがシリーズ化することによって、受賞作品に求められるクオリティレベルが応募者に浸透してきたものと思われ、とても喜ばしいことである。
ここにきて「パッシブデザイン」の重要性が再認識されるような機会が増えてきた。エネルギー基本計画には、省エネルギー義務化とともに、「2020年までに標準的な新築住宅で」、「2030年までに新築住宅の平均で」ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を実現することが掲げられている。国土交通省と経済産業省は、2012年度にZEHの補助事業を創設し、現在は「地域型住宅グリーン化事業(国土交通省)」「ZEH支援事業(経済産業省)」においてZEHを推進している。自社のZEH(Nearly ZEHを含む)が占める割合を2020年度までに50%以上となるZEH普及目標を自社のホームページや会社概要などで公表して、これの実現に努めることを宣言する「ZEHビルダー」の登録数も3,700件を超えており、大手住宅メーカーのみならず、地域の中小工務店も含めた住宅事業者からのZEHに対する注目度合いが急激に高くなっている。さらに住宅版BELSの制度も運用開始されている。「標準的な新築住宅」をZEHにするということは、ハウスメーカーや工務店が供給する新築住宅の過半数がZEHになっていることを意味している。気候変動枠組条約第21回締結国際会議(COP21)(フランス パリ)において日本は家庭部門のCO2排出量を2030年までに4割削減する目標を掲げている。この削減目標を実現するためには、住宅と建築物においてより一層の省エネ化の促進が必要となるわけだ。新築に加えてストック建築の性能向上も重要な課題となっている。いずれの課題の解決にも適切なパッシブデザインは欠くことができないものである。パッシブデザインコンペのもつ責任も、日々大きくなっている。
(審査員:秋元孝之)

パッシブデザインコンペなのだから、パッシブでデザイン、パッシブとデザイン、パッシブなデザインなど色々に考えられる。パッシブは日射取得や日射遮蔽、太陽熱暖房、太陽熱給湯、風、水蒸気、蓄熱、地熱などの自然のエネルギーをうまく生活に取り入れ、その様がうまくデザインになって欲しい。デザインは綺麗、美しい、豊かだ、理にかなったなどの言葉で表現される。
今年の2016年ばかりでなく、例年のパッシブデザインコンペには綺麗なデザインの家が応募されている。そのような土壌である。大賞の「はりまの杜 しそう杉の家」、横内審査員長が選んだ横内賞の「方形の家」と「二つ庭の家」は特に綺麗だ。私の役目は性能とデザインのバランスなので性能の話にうつる。ほとんどの応募作は、パッシブの代表格の日射取得と日射遮蔽を考えているが躯体の性能は平成28年省エネ基準程度に甘んじている。
パッシブは微弱なエネルギーなので、うまく使うには躯体の高い性能が求められる。2020年に平成28年省エネ基準が義務化され最低限のレベルとされる。それとともに省エネの標準レベルがアップされ、ゼロエネルギーのZEHや民間レベルではHEAT20のG1グレードやG2グレードが登場している。当然ながらパッシブデザインコンペにも反映される。コンペなのだからG2グレードレベルのパッシブデザインを期待する。しかし、G2グレード前後のUA値が0.35W/m2Kの秋元賞「Diagonal boxes」とUA値が0.14W/m2Kのレベルが遥かに上の「米原の家」だけであったのは残念に思える。躯体性能が良くなると日射取得が効果的になり太陽があると室温が20℃前後を保て暖かくストレスなく住まえる。「Diagonal boxes」は真南に1・2階とも大開口部で大きな日射取得を計っている。ガラス熱貫流率と日射侵入率を書き込んで欲しいのと、冬期の南面のガラスの熱収支を知りたい。自然室温が17℃以上、平均20℃前後と素晴らしい温熱環境である。そして日射遮蔽を考えないと冬期でもオーバーヒートしてしまう。
次年度は躯体性能が少なくてもG1グレードでG2グレード以上のパッシブデザインを考えた応募作が多くなって欲しい。
(審査員:西方里見)

大賞

『はりまの杜 しそう杉の家』
株式会社 山弘
三渡 眞介
建設地/兵庫県姫路市

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講評
総評でも記したが、林業との連携や木材の品質管理、独自の生産システムにいたるまでの一貫した姿勢に関しては目を見張るものがあった。また住宅の設計内容自体も地域に根ざしたデザインを意識した、堅実で無駄がなく、空間性も豊かなものであり、完成度が高い印象を持った。街並みに対する配慮や外構計画も十分になされており、あらゆる手法を総合的に用いて、パッシブな住宅のデザインに取り組んでいる視野の広さも、高い評価を得た。
プレゼンテーションも、作り手の熱意や意図がわかりやすく示されていて、優れていた。
(審査員長:横内敏人)

兵庫県播磨地域に伝承されてきた地産地消の技術を、現代人の暮らしに合うように再認識・再評価することによって実現した魅力的な住宅である。定量的なオンサイトの気象条件を把握して、経験則に基づくヴァナキュラーな環境配慮のためのパッシブ的手法と補完的なアクティブ手法とをバランスよく融合させることに成功している。居住後の室内環境評価のコミッショニングも実施することで、この住宅のクオリティの高さを実証している。提案者は、地場産材である宍粟(しそう)杉を自前で低温乾燥して製材、加工するとともに、断熱性能に優れた屋根パネルを製作する等、現代版のはりま住宅に活用する建材の生産にも関わっていることは大変興味深く、高く評価したい。
(審査員:秋元孝之)

「はりまの杜・しそう杉の家」の評価は、外観写真の説明にあるように「里山の山木が広がるランドスケープと一体化した現代の播磨型住宅」の具現化につきる。里山の山々を背景にした敷地内の植栽と外構と家の形の外観写真から窺えるし、美しい借景をとらえた大きな開口部の何枚もの室内の写真からも窺える。
外部と内部の空間を一体化しているのは、美しい借景と通風を求めての3箇所の矩手の大きな開口部であり、周囲の自然と一体感をかもし出し、豊かで綺麗な室内空間になっている。自然との一体感はもう一つの工夫がある。リビングの東南の矩手の引き込みの4間の大開口部から繋がる、庇となるメインバルコニーの下の里山のテラスである。内部空間と外部空間との中間領域での営みは生活にアクセントをもたらしているでしょう。
パッシブデザインにはデザインとともに性能が求められます。性能はUA値が0.86W/m2Kと平成28年省エネ基準のギリギリでクリアしていますが、コンテストに出すからにはHEAT20のG2グレードの0.46W/m2Kは欲しい。
太陽エネルギーが豊富な播磨なので、冬期は日射取得の屋根面下の暖気を暖房に使うとともに、大きな窓からも日射取得をはかっているのでmH値が17.77W/m2Kと大きいのは評価できる。逆に夏期にmC値が12.10W/m2Kと大きいのは長い庇で日射遮蔽を行なっているものの東西の窓の横殴りの日射遮蔽がさらに工夫が必要である。
パッシブデザイン・アクティブデザインの事後検証では、快晴日のみの15時の室内のリビングの平均温度が低いのではなかろうか。これはUA値をHEAT20のG2グレードに上げれば解決できよう。
(審査員:西方里見)

優秀賞

『ならやまの家』
トヨダヤスシ設計事務所+伊藤吉郎
豊田 保之
建設地/奈良県奈良市

講評
平面計画、断熱計画共に、建築的な工夫により夏涼しく冬暖かいパッシブな家づくりがなされている。潜熱蓄熱材を利用した南側の大開口部はこの家の最大の特徴だが、プロポーションも良く、内部も明るく、機能性も十分に配慮されたプランとなっている。太陽光発電を積極的に取り入れた設備計画は、高いエネルギー効率を達成しているが、パッシブな取り組みとしては、外構の植栽計画などにまだ取り組みの余地が残されている印象があった。
(審査員長:横内敏人)

奈良吉野・紀州の木材と、背面に羊毛を充填した伝統的手法である土壁を用いた省エネルギー住宅である。無垢材のフローリング下部には、PCM(潜熱蓄熱材)を施して、居住域空間におけるパッシブエネルギー利用を目指している。設計段階からパッシブデザインに求められる日照や集熱・断熱・蓄熱、通風、等の予測を行なって、バランスの良い省エネルギー住宅を実現している。居住後の検証では、採用したパッシブ技術やエネルギー消費量を評価するとともに、居室内の上下温度分布や住まい手の健康状態についても調査しており、快適で健康的な住宅としてのウェルネス性能の高さを確認している。提案者は、地域性を読み取るデザインを標榜しており、好感が持てる。
(審査員:秋元孝之)

一言で説明している「土壁と自然素材を使ったゼロエネルギーハウス」のために土塗壁の蓄熱効果と調湿効果を最大限に引っ張りだそうとした計画に思えます。さらに窓側の床には潜熱蓄熱材のPCMを使っています。室内は絵にしたようなパッシブデザインとエコハウスです。しかしながら、太陽光パネルと太陽熱給湯パネルが載った屋根の写真はメカメカしがリアルで美しくありません。ただ載せるだけではなく建築部材として一体化し美しくありたいものです。
性能の表記はUA値は0.55W/m2K、Q値は1.9W/m2Kとありますが、コンテストに出すからにはHEAT20のG2グレードのUA値は0.46W/m2K、Q値は1.6W/m2Kは欲しいものです。
C値の2.3㎠/㎡は1.0㎠/㎡にして欲しい。2.3㎠/㎡では冷たい隙間風が気になるでしょう。
(審査員:西方里見)

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『タタミリビングの家』
一級建築士事務所 co-design studio
小嶋 直
建設地/埼玉県川口市

講評
都市的周辺環境の比較的小規模の家であるが、プライバシイを確保するために、大きな開口部が取りにくい一階部分を、屋根面の空気集熱により暖房し、大きな開口部を設けることができ、陽当たりが良い2階部分はダイレクトゲインで太陽熱を取り込むという、きわめて合理的で素直な取り組みがなされているところは、高く評価できる。内部空間もパッシブデザインが空間的な変化をつくるのに生かされており、プロポーションのバランスも良い。都市的環境でのパッシブデザインのひとつのモデルとなるような作品として高く評価できる内容だった。
(審査員長:横内敏人)

南面の大きな開口部をもつ畳仕上げのリビングダイニング空間が特徴的な住宅だ。この空間が車庫上部に張り出してピロティになっているため、床下からの熱損失が懸念されたが、居住後のエネルギー消費量や冬期の室内温度推移を見る限り、十分な断熱対策が施されていると思われる。空気集熱式ソーラーシステムに加えて、大開口部には断熱フィルムとハニカムサーモスクリーン、室内に穿たれた空気循環用の孔、北側寝室の採光用トップライト、等が計画されている。住まい手が自らアクティブに生活することによって、住宅内に導入する日射や通風のパッシブエネルギーを活用することが可能となる。シンプルなデザインの中に様々な工夫が散りばめられている。
(審査員:秋元孝之)

優秀なデザインである。
空気集熱式ソーラーシステムと2階の巾4mの大窓からの日射取得が大きいと思われる。しかし、冬期の室温推移を見ると、「2階リビング10℃以上を示し、そよ風の効果で19℃と上昇を見込めているとある。」とあるが、災害時も含め日射が無く無暖房状態で15℃は欲しい。大窓の熱損失を少なくする工夫はしているものの、隙間が多いだろうしUw値やUg値の表記はないものの低いように思われる。日射を考慮して2階の居間は21℃前後、1階も含め全室が18℃以上を維持できるパッシブデザインの計画が欲しい。それにはHEAT20のG2グレードのUA値は0.46W/m2K、Q値は1.6W/m2Kは欲しいものです。
(審査員:西方里見)

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工務店部門賞

『中大塚の家』
株式会社 小林建設
野口 浩平
建設地/群馬県藤岡市

講評
ダイレクトゲインで得た熱を蓄熱するための土間を玄関として、そこが地域の人々が気軽に訪れることができる場所として解放されているところが、この家の最大の魅力である。それは、地方都市ののどかな郊外という地域性に合っていて、極めて合理的で楽しいプランだったという印象を持った。ダイレクトゲインだけでなく、屋根面での空気集熱も取り入れており、パッシブデザインに対する積極的な取り組みは大いに評価できる。
(審査員長:横内敏人)

太陽エネルギーを有効活用することができる群馬県藤岡市の気候特性を活かした省エネルギー住宅である。地場産材を活用するとともに、断熱性能の強化、空気集熱式ソーラーシステム、太陽光発電システム、等を導入することによって、住宅のネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)化を実現していることは大変素晴らしいことだ。工務店によるZEH供給を先導する意味でも大変意義深い試みである。冬期のダイレクトゲインのための土間サンルームも快適な空間となるだろう。開口部の木製サッシは3枚の引き込みタイプであり、住まい手の判断によってその開閉を行うことで、屋外と室内とのバッファ空間の使い方が多様化する点にも工夫が見られる。
(審査員:秋元孝之)

「本計画では、1次エネルギー消費量の計算・評価を実施し、建物の性能のみで57.3%のエネルギー削減率、太陽光発電による創エネを加えて、117.2%のエネルギー削減率を達成している。」は評価できます。数値以上に評価できるのは、巾3間の大ガラス戸で日射取得が大きく蓄熱ができる土間玄関です。ガラス戸はLow-Eペアガラス(2.33W/m2K)木製サッシですが、Uw=1.2W/m2K前後の窓を使い、ガラスは日射取得率G値0.75前後のものを使いたい。
UA値=0.48、Q値=1.92では日射がない日が続くと冬の室温をおよそ15℃に保つことが難しく思われる。日射が無くても実現するためには、Q値が2.0を切る断熱性能を目指すのではなく、HEAT20のG2グレードのUA値は0.34W/m2K、Q値は1.3W/m2Kは欲しいものです。
(審査員:西方里見)

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特別賞

『和らぎの家』
株式会社和工務店×徳田英和設計事務所
夏目 信幸×徳田 英和
建設地/愛知県春日井市

講評
都市の密集地でのパッシブな家づくりの好例として、高い評価を得た。
ほぼ同じ形の2つの敷地で、外観が同じだがプランの異なる2つのタイプを実現している点が興味深く、2タイプ共にコンパクトで使い勝手の良いプランとなっている。屋根面での空気集熱と太陽光パネルをバランス良く設置していて、都市の密集地にも関わらず、きわめて良好な温熱環境をつくり上げている点が高い評価を得た。
(審査員長:横内敏人)

敷地や気候特性を十分に検討した上で、具体的なパッシブ手法を提案していることを評価したい。南北に長い敷地形状では窓開口部からの集熱が難しいが、空気集熱式ソーラーシステムを利用することによってそれを十二分に補っている。起床時の室温15℃以上、省エネルギー手法の導入と太陽光発電による創エネルギーによるネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の実現、等の設計時点に設定した目標が大変興味深い。省エネルギー意識の高い住まい手が、高い省エネルギー性能ポテンシャルをもった住宅の性能を遺憾なく発揮していることを実証していることからも、提案者と住まい手との間の密なコミュニケーションが実現できていることが窺われる。
(審査員:秋元孝之)

同じ大きさでほぼ同じデザインの家が並びながら綺麗だ。このリピテーションの綺麗さは10戸並んでも綺麗なのではなかろうか。
東西に間口が狭い敷地で家も南北に長く、南面の外壁の面積が少なく、窓からの日射取得が不利である。それを屋根の日射取得を利用した太陽熱空気暖房と太陽光発電のシステムを使うことは合理的である。しかし、少ない南面だが、より開口を大きくし日射取得で暖房エネルギー削減につとめることが必要に思われる。「外気温は氷点下近いが、室温は最も寒くなる明け方でも13℃以上前後に保っている」は評価が出来るが、15℃以上にするとストレスが少なくなる。それにはもうすこし性能アップし、HEAT20のG2グレードのUA値は0.46W/m2K、Q値は1.6W/m2Kは欲しいものです。
(審査員:西方里見)

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佳作

横内賞

『二つ庭の家』
バウムスタイルアーキテクト一級建築士事務所
藤原 昌彦
建設地/岡山県岡山市

<講評>

南面吹抜けの大開口部から直接太陽光を入れ、暗い色調のタイルに蓄熱させるというダイレクトゲインのパッシブな手法と、プランニングの考え方がよく合っており、明るくさわやかでデザイン性の高い住宅となっている。このタイプのプランに特有の、南面する大開口部からは光が多く入りすぎ、プライバシイを確保しにくいという問題も、建物をL字にすることや、バルコニーを張り出して影をつくること、建物の近くに落葉樹の高木を植えることなどで、たくみに解決している。様々な配慮の行き届いたバランスの良い住宅として高く評価した。
(審査員長:横内敏人)

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『方形の家』
富士ソーラーハウス+岡村未来子
建設地/神奈川県横浜市

<講評>

建築的・空間的魅力に富む完成度の高い住宅である。
熱効率を高めるための仕様も充実しており、性能も十分に確保されている。出隅をすべてコーナー窓にしていることで、開口面積を多く取らなくても十分な室内の明るさと開放感を手に入れている点は評価できるが、パッシブという点では、南からの光に対する意識が少し弱いという印象があった。しかし室内の光は美しく、外観も控え目でチャーミングなところは、1軒の住宅として高く評価したい。
(審査員長:横内敏人)

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秋元賞

『Diagonal Boxes』
川島 範久・佐藤 桂火・高瀬 幸造・平岩 良之
建設地/埼玉県所沢市

<講評>

徹底的な断熱強化と開口部における真空トリプルガラス、樹脂サッシ、断熱ハニカムブラインドの採用による堅牢な外皮性能の実現に加えて、ペットボトル利用の蓄熱体や全熱交換換気、10kWの太陽光発電システム、等、全力投球の省エネ対策に余念がない。しっかりとした事前事後の室内温熱環境及び省エネルギーの評価を行なっている点も高く評価できる。真南に面するように回転した2階部分も、自邸のパッシブエネルギー利用のためだけでなく、近隣への日影に配慮したデザインだ。ただし、タイトルにもなっている対角線の空間は使い勝手に対して評価が分かれるところではある。ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の秀作の一つとして評価したい提案である。
(審査員:秋元孝之)

敷地の軸線が南北とほぼ45°ずれていることを逆手に取り、あえて住宅の中に45°の軸線を投入することにより、パッシブな取り組みと建築的な空間のダイナミズムの両方を達しようとした、意欲的な作品である。床下にペットボトルを並べて蓄熱するなど、手法は独自性に富んでいるものの、リビングが明るすぎ、陰影に乏しい点や庇の出が少ない点などが、議論の対象となった。
(審査員長:横内敏人)

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西方賞

『米原の家』
吉岡昌一建築設計事務所
吉岡 昌一
建設地/滋賀県米原市

<講評>

パッシブデザインとしては日射取得のため南面に大きな開口部を配意するのが定石だが、「米原の家」は東側の眺望が良いために建主の希望をかなえ、あえて東側に大きな開口部を配置している。米原は日本海気候に近く冬期の日射量が少ないことから、太平洋側の日射量が大きい地域より影響が少ないことを見通していてのことだろうか。
期待できない日射量をあきらめ、躯体からの熱損失をいかに少なくするかで屋根の断熱材は厚さ640mmセルロースファイバー、外壁は445mmと極めて厚く、UA値は0.14W/m2Kと極めて小さくし、大開口部の窓のUw値は0.7W/m2K、ガラスのUg値は0.5W/m2Kで極めて熱損失が少ないものの使用は評価できる。また、夏期の東側大開口部から入る横殴りの朝の日射を、手作りのテントで遮断し、夏期のηAC:1.3を実現しているのは評価できる。
デザインは大きな屋根があり長い庇があるこれまでのパッシブデザインの家らしさでなく、住まいやすさを求めての徹底的な機能から生まれたデザインであることが評価できる。
(審査員:西方里見)

独自の素材の用い方や断熱の手法により、限られたコストの中で極めて高い断熱性能を確保している点は、高く評価したい。ただし、周辺環境を考えると、住宅の形態に違和感を感じざるを得ず、大きな開口部が東に面している点も、議論の対象となった。
(審査員長:横内敏人)

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過去の入賞作品



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