パッシブデザインコンペ

パッシブデザインコンペ 2015入賞作品紹介

パッシブデザインコンペ2015ロゴ

建築デザインの重要な要素として、パッシブデザインを位置づける設計者が増えています。
今回で3回目となるパッシブデザインコンペは、そうした設計者の取り組みを評価し、世の中に広くパッシブデザインの魅力を伝えるために企画されたものです。

募集概要

<住宅部門>
パッシブデザインに配慮した住宅(リフォーム含む)の実物件および計画案。
※パッシブデザインの観点からの事前評価(温熱および省エネ性能)、事後検証(温湿度およびエネルギー消費量計測)を実施しているものは、評価の加点対象となります。

<施設・建築部門>
パッシブデザインに配慮した施設物件の実物件および計画案。
また、パッシブデザインを導入する上で採用する技術(製品・計画手法など)も対象とします。
※パッシブデザインの観点からの事前評価(温熱および省エネ性能)、事後検証(温湿度およびエネルギー消費量計測)を実施しているものは、評価の加点対象となります。

<応募作品受付期間>
2015年6月15日(月)~10月1日(木)

<審査員>
■審査員長
野沢 正光(野沢正光建築工房 代表/武蔵野美術大学 客員教授)

■審査員
秋元 孝之(芝浦工業大学工学部建築工学科 教授)
西方 里見(西方設計 代表)

審査員長からの総評
住宅部門にはたくさんの応募があり力作が多くありました。省エネ基準の義務化を目の前に建築設計の主題が大きく変化している、その現況を反映するものが多くあったことを喜びたいと思います。作品個々の評価は受賞作についてのコメントとしたいと思います。協議会によりパッシブデザイン認証制度がスタート、パッシブデザインの効果を予測するシミュレーションソフトの公開があり、そうしたソフトでの検証事例も応募作の中にありました。そうした様々なツールの一層の活用が期待されます。
今回のパッシブデザイン賞は昨年の審査員に西方さんを迎え、秋元さんと私は昨年に引き続き審査にあたりました。賞の決定に審査員のキャラクターは大きくかかわるのは言うまでもないことです。西方さんの参加はパッシブデザイン賞の特徴をよりはっきりさせたと思っています。きちんと想定した温熱環境、たとえそれが温暖な地域であっても想定に間違いがないもの、またはデータがそれを表示しているものを評価したいとの意向です。結果、デザインが優れ一見パッシブな建築に見えるものについても厳しい判断がくだることもありました。
改めていうまでもないことですが、パッシブデザインとは一定の決まりに基づく規範だらけのものではなく建築家が個々の建築を取り巻く様々な条件を果敢に発見し合理的な答えを模索提示しているもの、と考えたいと思うのです。場合によればその提示は幾分危うい 仮説的なものであることもありうるとも思うのです。否、むしろ仮説を含むものであることが意義深いといえるとさえ思うのです。
今回のパッシブデザイン賞の応募状況を見ますと 住宅部門は37点の応募がありそれなりにこの賞の認知が進んであるものと思われるのですが、一般建築の応募については残念なことにごく少数であり、審査そのものが難しいといえる実情でした。この賞の広報に問題があるのか、あるいはもともと応募者の母数が住宅設計者 住宅施工者に偏しているのか判然としませんが今後考えなくてはならない課題であると思いました。
(審査員長 野沢正光)
審査員からの総評
今回で3回目となるパッシブデザインコンペだが、計画段階におけるシミュレーションツール等を用いた検討に加えて、竣工引渡し後の実生活時における所謂省エネルギーや室内温熱環境の快適性に関する事後評価を実施している提案が着実に増えてきたように思う。バナキュラー建築に代表されるパッシブデザインの起源は人類の歴史とともにある。古くからの生活体験に根ざしたアイデアには尊重すべきものが数多くあるが、都市化の進んだ現代社会では、それをそのまま適用したのでは効果が半減してしまうというようなことも起こりうる。事前事後の科学的でかつ定量的な評価といった、「慎重な手順を踏んだ温故知新」が重要であろう。
 大賞を受賞した「アクティブに暮らす、パッシブデザインの家」では、住まい手にパッシブデザイン住宅の設計意図をしっかりと理解してもらうことによってその効果を最大限に引き出すことに成功している。高い環境性能をもっている建物も、その使い方によってはエネルギー多消費型の建物としてしか映らない可能性もある。パッシブデザインの魅力やそれを創る意味、そこで暮らす意味をしっかりと世の中に発信していくことも求められている。
今回のパッシブデザインコンペでは、住宅部門における特に新築の提案が数多く寄せられた。その反面、既存住宅のリフォームの提案は限られていた。特に残念なこととしては、施設・建築部門の提案の数が思ったよりも少なかったことだ。民生部門における環境負荷削減を念頭に置いたとき、住宅と非住宅は車の両輪である。今後の施設・建築部門の提案応募に期待したい。
(審査員 秋元孝之)

「日射をよりうまく使う」
パッシブデザインの手法は数々あるのだが、ほとんどの手法を網羅した提案と一部を深めた提案に分かれていた。大賞は手法のほとんどを網羅したテキストに沿い加点が多く減点が少ない提案である。多くの提案の中で数多く挙げられていたのは日射取得・遮蔽と通風で、日射取得・遮蔽はフルシーズンに役立つ。
冬期や中間期の室内のオーバーヒートを防いだり、夏期を涼しく住まうには日射遮蔽が重要で、伝統的な手法では庇を長くし開口部や外壁面を陰りにする・簾で開口部を覆う、近年の技術では外付けブラインドや外付けシェードを使う・日射遮蔽ガラスを使うなどの各種の工夫された提案が多く見られ評価ができる。
しかし、開口部の日射遮蔽の提案が多いのだが、建築の性能がより良くなれば外壁面や屋根面の日射遮蔽が必要になるが、その提案が少なかった。特別賞のレンガスクリーンは日射遮蔽と気化熱で外装の温度を下げることは評価ができる。
冬期に低燃費で暖かく住まうには日射取得が必要で、南面に居間や食堂などの大きな開口部を面で設置し、開口部をより大きくする事が最重要なのだが、開口部を大きくするとガラスからの熱損失も大きくなり熱収支をプラスにする工夫が必要になる。ただ窓を大きくするだけでは熱収支がマイナスになってしまう。 ガラスだけで解決するには、日射取得(G値)がより大きく熱損失(熱貫流率のUg値)が少ないバランスが取れたガラスを使うことで、どんなガラスを使うかの提案がなかった。室内側に断熱サーモスクリーンや断熱戸を使う提案はあったが、これではガラスの室内側の表面温度が下がり結露やコールドドラフトの不快さを防ぐ事はできない。
パッシブはデザインであることの提案は多かったが、エコはデザインであることはもちろん、もうひとつの建築物理もデザインしよう。
(審査員 西方里見)

大賞

住宅部門

『アクティブに暮らす、パッシブデザインの家』
HAN環境・建築設計事務所
冨田享祐・松田毅紀・南澤圭祐
建設地/長野県長野市

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講評
南に高く北に流れる片流れ屋根、こうすると夏の強烈な日射をどのように対処するかがテーマとなる。比較的南面が壁で閉じられているプランは南に隣家が近いことによっているのだと気づく。二階リビングの採用、夏のために装備された高窓のターフ、南面水平ルーバー、いわば敷地の負の個性、それが正の個性となるデザインといえよう。広いテラスが東のビスタの発見がこの建築家の手柄、落葉高木の植栽も将来が楽しみ。ただ駐車場のコンクリートはいかがか?
(野沢正光)

自然エネルギーを有効利用するためには、住まい手がより活動的でなければならないという基本事項を具現化した提案である。眺望と冬期の日射導入をはじめとする施主要望に応えつつ、季節に配慮した日射制御や排熱等に関するパッシブデザインの仕掛けと、それらを活用するための生活行動に基づく方法を詳細に示している。ともすると住まい手が設計者の意図を十分に汲み取ることができずに、まさに「もったいない」使い方をすることがあるが、この提案では、コミュニケーションを活発に行うことによって、住宅が本来備えている環境制御のポテンシャルを十分に引き出すことに成功した。大変好感が持てる設計アプローチ手法でありその実践事例である。
(秋元孝之)

パッシブデザインのありとあらゆる手法をこれでもかこれでもかと使い建主の思いに答えているのは高く評価できる。夏のポイントと冬のポイントを考えた「パッシブデザインの骨格づくり」をし、それの現実化のための手法は「パッシブデザインの仕掛け×10」が挙げられている。
この10の手法は17枚の写真で丁寧にプレゼテーションされ良く理解できる。こうした創る物への提案と、更には「アクティブな暮らし×10」の建主の暮らし方まで親切に提案され好感がもてる。夜間換気の効果検証は6月ではなく、7・8月の暑い時期の効果があるデーターも知りたい。
建設地は寒冷地の長野市なので、かなり大きな開口部のガラスの日射取得熱と熱損失のバランスを考え熱収支はプラスになっているのだろうか。エアコンかヒートポンプが14kWではかなり大きすぎると思うのだが、実際の冬の燃費はいかほどだろうか。
(西方里見)

優秀賞

住宅部門

『科の木箱 37/100』
葛西潔建築設計事務所
葛西 潔
建設地/神奈川県川崎市

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講評
サンルームに特徴があるシンプルな木箱。一般にサンルームは夏の対策に苦慮する。日本の気候が極端に夏冬の差を持つからだ。このプロジェクトはその解決を外付けブラインドなどの装備によって片づけようとするもの。この策謀はきっとうまくいっているのであろう。ただ、エネルギー消費量のグラフにあるように深夜電力利用の床暖房の採用、これはいただけない。これほどの策謀を駆使できる建築家には言うまでもないことだが 電力の資源使用量という重たい課題にも思いをはせていただきたかったと思う。
(野沢正光)

環境配慮の意識が高い高齢者夫婦のための住宅である。温熱環境のバッファゾーンとして機能する南面のサンルームが特徴的だ。敷地の自然条件を十二分に理解している住まい手が正しくブラインドや引き戸等を開閉することで、機械設備に頼らずに快適で健康的な室内環境を維持することが可能となった。年間を通じた暖房、冷房、給湯、照明等の用途別エネルギー消費量や、季節毎の外気温と居間、寝室等の室温変動の実測によって、採用したパッシブデザイン手法の効果を検証している点は大いに評価することができる。また、入居後に住まい手が付加的な工夫を凝らしている。正にサステナブルな生活スタイルを実現する住宅の好事例と言えるだろう。
(秋元孝之)

プレゼンテーションのように考え所と見せ所はバッファーゾーンとしてのサンルームで、冬はサンルームの南面の全面がガラスで日射取得し、日射が無い場合の時間帯は居間との間仕切りが断熱戸の役割を果たし、熱損失を押さえている。この熱収支を知りたい。
用途別エネルギー消費量のグラフでは暖房の実際値が基準値や設計値より大きいのは南面のガラスと断熱戸の熱収支のバランスがとれていないのではなかろうか。それを解決するには日射取得が大きく熱損失が少なく熱収支が良いガラスを使う必要がある。
夏は外付ブラインドなどの使用で日射遮蔽をおこなっているので、夏の室温変動と用途別エネルギー消費量のグラフを読み取ると冷房負荷が少ない効果が現れている。
(西方里見)

特別賞

『京町町家』
株式会社ザイソウハウス
建設地/愛知県豊田市

講評
三棟の住宅が作る好もしい緑地、この生育がきっとここを戸建て住宅地の中で他と違う豊かさを作り出すに違いない。個ではなく数棟の独立住宅を群として考えることができればそこに現れる環境は豊かなコミュニティを作り出す。住宅はQ値2,3とのこと。オーエムであることを考えるともう少し建物の断熱蓄熱レベルをあげたかったか。夜間の温度降下が幾分でも蓄熱により緩和されるとよかったか。豊田市、自動車産業の城下町のせいか駐車スペースが敷地面積の30パーセント弱を占めているのか。コンクリートの擁壁、コンクリートの舗装は景観上も何とかしたい。
(野沢正光)

3棟の分譲住宅である。計画段階において地域の特性を考慮した周到な検討を行うことで、パッシブデザイン住宅によって構成される心地よい街区を形成することができた。区画や動線を考慮して各住宅の配置を行うとともに、夏期の日射遮蔽や通風、冬期の日射取得、等の自然エネルギーを有効利用するための屋根や開口部を適切に計画している。開口部や軒の出は年間の日影シミュレーションの結果を参考にしてデザインし、また、地域特性を活かした効率的な採風、通風を実現するためにウインドキャッチャーも採用した。実績のある太陽エネルギーによる床暖房や給湯システムを採用することによって、信頼性の高い住宅群となっている。
(秋元孝之)

戸建だけではなく、3棟それぞれの関わりからパッシブデザインを考えている事が評価される。
(西方里見)

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『AKASAKA BRICK RESIDENCE』
KINO architects
木下昌大・石黒大輔・内海大空
建設地/東京都港区

講評
施設建築については総評でも述べたが応募が少なく応募作品が建築としてのビジュアルが優れていてもパッシブな視点から評価できるかとの問いに積極的にこたえるものではなかった。特別賞はこのブリックによる被膜が日射による負荷を緩和し環境的言語としても都市景観に対しても一定の意義を持つものになりうるのではないか、という一点による。ただしここでのサーモ画像は降雨の翌日のものであり晴天続きの状況を考えると全く逆の効果をもたらすのではと考えることも容易だ。例えば雨水の貯留利用などにより一定の水分をこれに保持させるなど根本的工夫無しで評価はできない。
(野沢正光)

都心部における中高層住宅にレンガを積層したセミオープンなファサードをデザインする試みである。光と風を取り込むバルコニー部分が延床面積に算入されないような造りとすることで、容積率や避難上の課題も解決している点はよく練られている。建築と街の間を緩やかに繋ぐ新たな試みであることを評価したい。透かし積みとしたレンガは、強い日射を遮蔽しながらも通風を期待する「沖縄の花ブロック」にも通じるように思う。降雨後の蒸発冷却効果は期待できるが、晴天時に備えた散水機能を付加してもよいのかもしれない。冬期におけるダイレクトゲインがなくなるが、実生活時の年間を通じた評価も確認したいところだ。
(秋元孝之)

この建築はレンガスクリーンの工夫の一点で評価された。レンガスクリーンは都市景観を刷新するというデザインだけでなく、気化熱と日射遮蔽で外装の温度を下げる機能を果たすのは評価できる。
サーモグラフィーは雨の翌日なのだが、気化熱で温度を下げる効果の持続性はいかほどだろうか。
(西方里見)

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※今回は、大賞・優秀賞の施設・建築部門での該当作品はありません。

佳作

『3世代のパッシブハウス』
株式会社OKUTA
LOHAS studioデザインチーム
建設地/埼玉県さいたま市

<講評>

1、2階の住居と三階の外階段でも独立のアプローチできる二世帯住宅のリノベーション。何しろQ値を8,2から0,9にまで改善したのはすごい。既存住宅の温熱改修は焦眉の急、この試みを評価したい。きっと圧倒的に室内環境が変化しただろう。しかも外階段を撤去、エレベータを設置し上階を高齢夫婦の住居とするなど果敢な計画である。狭小な敷地でありこれ以上を望むのは難しいがコンクリートの外周の土間は雨水のしみる緑あふれるものにできたのではないか。
(野沢正光)

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『森林公園の家』
HAN環境・建築設計事務所
南澤圭祐・松田毅紀・冨田享祐
建設地/埼玉県比企郡滑川町

<講評>

自然環境が豊かな森林公園に隣接した傾斜地に、地域特性を十分に活かしたパッシブ住宅を提案した。年間の微気候を十分に把握した計画である。地域に調和することを旨としつつ、住宅周辺の斜面から侵入する冷気や畑の気化熱を活用し、また日射制御のための庇や開口部デザインに工夫を凝らしている点は注目に値する。ヒートポンプ熱源による蓄熱式床暖房のための温水配管は、住宅内の熱移動にも一役買っており、省エネルギーで快適、健康な生活をサポートする。深い奥行きの庇は古典的な手法ではあるが、先端に緑化ネットや外付けスクリーンを設置することもできる。季節や時間帯に応じて光と風を意識した住まい方を楽しむコンセプトが興味深い。
(秋元孝之)

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『米原の家』
吉岡昌一建築設計事務所
吉岡 昌一
建設地/滋賀県米原市

<講評>

性能は壁や屋根や床などの部位の熱貫流率が0.051W/m2Kから0.078W/m2Kで説明されているが、分かりやすくは高性能グラスウールに換算すると厚さが880mm〜580mm、窓の熱貫流率はガラスが0.5W/m2Kのトリプルガラス、枠が0.93〜1.00W/m2Kと最高レベルの省エネ住宅のパッシブハウスで滋賀県北部の厳しい気候に対応する挑戦は多いに評価が出来る。
この家の魅力は開口部が大きい事だが、当初計画は暖房燃費を押さえるのに日射取得から巾8.2mの全面開口が南向きだったそうだが、景色の悪さから東向きにしたのは燃費上もったいないことだ。
PHPPの計算では暖房負荷が11.5kWh/m2と頗る少ないので、生活してからの実際値も少なさから楽しみである。
(西方里見)

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過去の入賞作品


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